【伊藤勢】

シリアスな場面に平気な顔でコメディ要素を入れるなど、一見楽天的なのかと思いきや、突き放すようなフラットな台詞でまとめたりする作風。
スターシステムを取り入れているのも特徴です。
取り上げるのは、主な3作。


羅ゴウ伝(全2巻・未完)

羅【ゴウ】伝 (1) (ドラゴンコミックス)

羅【ゴウ】伝 (1) (ドラゴンコミックス)

不老不死の秘宝を巡って、信州真田家の娘・和泉御前とその一味、家康の命を受けた服部半蔵率いる伊賀同心、さらには南海からやってきた異形の集団が争奪編を繰り広げる伝奇活劇。
異形異能が入り乱れるさまは、山田風太郎好きにはたまりません。スラップスティックマクガフィンにも痺れます。

少年キャプテンで連載されていた「斬魔剣伝」の構想を練り直したものなのですが、「斬魔剣伝」も「羅ゴウ伝」もともに第一部で完……。
南海波濤編がはじまるのを、いつまでも待っています。



荒野に獣 慟哭す(全9巻・未完)

荒野に獣 慟哭す(1) (マガジンZKC)

荒野に獣 慟哭す(1) (マガジンZKC)

山奥の研究所で目覚めた御門周平は、記憶を失っていただけでなく、「独覚ウイルス」に感染していた。
同じく独覚ウイルスに感染し、半獣半人と化した独覚兵たちと戦いながら、御門は己が何者であるかを追い求めていく。

夢枕獏さんの小説のマンガ化。
原作者の描かんとしたところをそれ以上に描いていたものの、残念ながら掲載誌であるマガジンZの休刊に伴い連載終了。
アマゾンに乗り込んで、いざクライマックスというところだったのに、また未完……。
単行本書き下ろしで出てくれないかなあ。



魔獣使いの少女(全6巻)

六門世界の召喚士カッシェ・アルバデルが、古代に失われた召喚術が記されたという「真宰辞書(アンシクロペディア・ヴェルム)」を狙う者たちの策謀に立ち向かう。

伊藤作品の長編で、唯一完結にまでこぎつけたもの。
共感能力が高過ぎるために召喚獣を支配できないというジレンマを抱いた主人公・カッシェが、出会いと別れを乗り越えて成長していく過程に胸が熱くなります。
「精神を鍛えるには肉体から」
「自分の力を信じるな」
「どうなるか、じゃない。どうしたいか、だ」
といった名台詞も満載。