ふぬけ。

この四月から、働く時間を大幅に減らした。
学生のころから数えて六回、受けては落ちた試験の受験を今年で最後にしようと思い、言い訳がきかないくらい勉強しようと決めたからだ。
自分を磨き、自信を持てるようになろうと思った。

働くストレスは減ったけれど、勉強ばかりしていると、一人で悶々することが増えてしまった。
大学を出てから人付き合いを最小限に留めたため、悩みを相談したり、一緒に憂さ晴らしをするような相手もいない。
抑圧して抑圧して抑圧しきった揚げ句、糸が切れて数少ない信頼できる人に当たり散らしてしまったりもした。
自分を磨くどころか、狭量さや卑小さが浮き彫りになり、自信を失うばかり。

その試験が終わり、何日かが経った。
正直、ふぬけきっている。
合否がわかるまではまだ数週間あり、身の振り方を決めるのはその後でよいだろうと好きなことをしている。
エヴァ破」を観た。面白かった。
「レスラー」を観た。面白かった。
マンガもたくさん読んだし、本は読みたいものばかりでおっつかず、積ん読がどんどん増えている。

ふと、勉強期間に入る前に応募したファンタジーもどきの伝奇小説がどうなったかを調べてみたら、ずばっと落選していたことがわかった。
閉塞感に包まれた日常を打破するひそかな希望だっただけに、したたかに途方に暮れた。

一体おれは何をしたいのだろうか、と自問自答する日々。
こういう風にだらだらといつまでも思春期が続いていくのだろうか。だとすると、尋常じゃなくしんどい。
日常のちょっとした失敗や、周囲の自分を見る目が気になってしまう。

このままでは精神的に参ってしまうと思い、筆記具を手に取り、しばらく前に考えていた話のプロットを作ってみた。
はじめて箱書きでやってみたところ、驚くほどスムーズに作業できた。
最近は一人称で書いてばかりだったので、三人称にして、物語が要求するにまかせて登場人物を増やしてみた。これもうまくハマった感触がある。
自分の中にあるさまざまな価値観、建前と本音、幼稚さ、承認欲求、コントロール欲求、矛盾しているのに並立する意見のすべてを、物語がスポンジのように吸い込んでくれる。

テーマなぞは決めず、とりあえずはエスプリの赴くまま物語を綴って行こうと思う。